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O-01 膵管内乳頭粘液性腫瘍と鑑別が困難であったVon-Hipple-Lindau病に合併した膵漿液性嚢胞腺腫の1例

永島 一憲、田中 孝尚、水口 貴仁、井澤 直哉、岩崎 茉莉、山宮 知、陣内 秀仁、山部 茜、土田 幸平、入澤 篤志
獨協医科大学 医学部 消化器講座


40 歳台男性。Von-Hipple-Lindau 病(HVL)、骨軟骨炎、眼血管腫、糖尿病、腎癌の既往あり。多発膵嚢胞にて経過観察されていたが、膵頭部の嚢胞が増大傾向のため当科を紹介受診。血液生化学検査では、膵AMYの軽度上昇の他には腫瘍マーカーを含め異常値は認めず。腹部CT では膵全体に小嚢胞性病変が存在し、膵頭部では比較的大きめの多房性嚢胞を認めた。MRI もCT と同様の所見であり、拡散強調で膵頭部病変は軽度高信号を呈した。同病変はEUS では外に凸の隔壁を有する30mm 大の多房性嚢胞として観察され、内部に結節を認めた。ERP では、乳頭からの粘液の排出は認めなかったが、膵頭部の多房性嚢胞と膵管との交通を認め、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) と診断した。本症例では背景膵に多発する小嚢胞を認めており、これらがVHL に合併した漿液性嚢胞腺腫(SCA)の可能性もあるものの、IPMN の存在や併存する膵癌・発癌の可能性もあることから膵全摘術を施行した。病理では、頭部の多房性嚢胞内腔面はグリコーゲンが豊富な細胞質を含む単層の上皮で覆われており、膵管との交通はなくSCA と診断した。膵全体に多発した嚢胞は全てSCA であり、VHL に合併するとされる単純性嚢胞ではなかった。また、IPMN は認めなかった。討論いただきたいこと:SCA が膵管と交通があった原因、膵全体の小嚢胞の病態。