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P-06 真性嚢胞を合併した自己免疫性膵炎の1切除例

深見 保之、有川 卓、大澤 高陽、鈴木 健太、内野 大倫、倉橋 真太郎、松村 卓樹、齊藤 卓也、小松 俊一郎、金子 健一朗、佐野 力
愛知医科大学 消化器外科


症例は69 歳,女性.近医のCT 検査で膵体部嚢胞性病変を指摘され当院消化器内科に紹介受診した.初診時の造影CT 検査とMRI 検査にて,膵体部背側に径20mm 大の分葉状腫瘤を認めた.主膵管拡張は認めなかった.EUS 検査で膵体部に径18mm 大・内部に隔壁構造を伴った嚢胞性病変を認めたが,壁在結節は認めなかった.CEA,CA19-9 は正常範囲内であった.以上より,膵体部分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断で3 年間経過観察を行っていた.今回,嚢胞径が33mm 大まで増大傾向を示したため,EUS-FNA を施行したが確定診断には至らず,外科的切除の方針とした.腹腔鏡下膵体尾部脾臓切除を行った(手術時間:4 時間13 分,出血量:10mL).摘出標本肉眼所見は,25mm 大の嚢胞性病変を認め,周囲膵実質は白色調に変化していた.嚢胞内部に粘液は認めなかった.病理組織学的所見は,嚢胞周囲に多数の形質細胞とリンパ球浸潤があり,閉塞性静脈炎も認めた.免疫染色にてIgG4 陽性形質細胞が40/HPF 以上認められた.嚢胞部分は円柱上皮で覆われており真性嚢胞と診断された.以上の所見より,真性嚢胞を伴った自己免疫性膵炎と診断された.術後軽度膵液瘻を合併したが軽快し,術後第13 病日に退院した.術後25 日目に測定したIgG4 は75.1mg/dL と正常範囲内であった. 今回われわれは真性嚢胞を伴い,術前鑑別診断にあげることができなかった自己免疫性膵炎の1例を経験したので発表する.