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O-10 限局性膵萎縮と主膵管狭窄を伴い膵癌が疑われた低異型度膵上皮内腫瘍性病変の1例

村林 桃士1),越田 真介1),野田  裕1,2),菅野 良秀1),小川 貴央1),楠瀬 寛顕1),酒井 利隆1),枡 かおり1),及川 昌也3),澤井 高志2),伊藤  啓1)
仙台市医療センター 仙台オープン病院 消化管・肝胆膵内科1),同 病理診断科2),同 消化器外科3)


症例は69歳男性.膵癌の家族歴(兄)あり.6年前のMRCPにて主膵管狭窄を指摘され,当科初診.各種画像検査にて狭窄部に膵腫瘤は認めず,膵液細胞診にて悪性所見なく,経過観察となった.その後,画像所見に著変なかったものの,膵液細胞診再検の希望があり,当科入院となった.MRCPでは,膵尾部に,尾側主膵管の拡張を伴わない主膵管狭窄を認めた.CTでは,膵尾部に腫瘤を指摘できなかったが,同部の限局性膵萎縮がみられた.EUSでも,膵尾部に主膵管狭窄を認めるのみで,膵腫瘤はみられなかった.ERPでは,膵尾部に主膵管狭窄を認めたが,尾側膵管の拡張はみられなかった.膵液細胞診(セルブロック法)では,HE染色で異型細胞集塊を複数認め,同部のKi-67標識率は40%であり,腺癌疑い(Class Ⅲb)の病理診断となった.膵上皮内癌または微小浸潤癌の術前診断にて,膵体尾部切除術を施行した.切除標本の組織所見では,主膵管狭窄部を中心とした主膵管ならびに近傍の分枝膵管上皮に低異型度膵上皮内腫瘍性病変(low-grade PanIN)を認めるのみであり,high-grade PanIN以上の悪性所見はみられなかった.議論して頂きたいポイント:推定される膵癌の存在部位について(残膵に存在する可能性,切除膵内に存在するがdetectできていない可能性).主膵管狭窄の原因は何か(low-grade PanINでも主膵管狭窄をきたし得るのか).