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P-13 術前に悪性リンパ腫と鑑別困難であったFollicular Pancreatitisによる多発腫瘤の1例

池田恵理子1,2),牛尾  純1),三輪田哲郎1),川崎 佑輝1),横山 健介1),多田 大和1),大城  久2),笹沼 英紀3),玉田 喜一1),佐田 尚宏3),福嶋 敬宜2)
自治医科大学 内科学講座 消化器内科部門1),自治医科大学 病理診断科2),自治医科大学 消化器一般移植外科3)


63歳、男性。脂肪肝の経過観察目的で、10年前から毎年体外式腹部超音波検査を受けていたところ、前年には認めなかった膵内に多発する低エコー腫瘤を指摘され、当院消化器内科に紹介された。膵体部に15mm、膵尾部に10mm、35mmの多発腫瘤を認め、いずれの病変も同様の画像所見を呈していた。腹部Dynamic CTでは平衡相にかけて徐々に染まり、MRIではT1WIで低信号、T2WIで軽度高信号、DWIで拡散が制限されていた。EUSでは境界明瞭な類円形の低エコー像を呈していた。血液検査では、IgG4や腫瘍マーカーの上昇は認めなかった。画像所見から、腫瘤形成性膵炎、膵原発悪性リンパ腫、膵神経内分泌腫瘍などを鑑別に挙げ、EUS-FNAを2回施行したところ、2回とも同様で、異型の乏しいリンパ球の比較的単一な増生がみられた。Ki-67indexが80%以上であったことからも、悪性リンパ腫の可能性が否定できないため、診断目的も兼ねて、腹腔鏡下膵体尾部除術を施行した。
肉眼的には境界不明瞭な黄白色の腫瘤性病変を認めた。病理組織学的には膵実質内に胚中心を有するリンパ濾胞の増生があり、びまん性に強い線維化を伴っていた。IgG4陽性の形質細胞の浸潤は目立ったが、花筵状線維化や閉塞性静脈炎は認めなかった。以上よりfollicular pancreatitisと診断した。