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P-14 非小細胞肺癌に対するニボルマブ長期加療後に出現した多発膵腫瘤の鑑別に苦慮した1例

織田 典明,小村 卓也,加賀谷尚史
国立病院機構 金沢医療センター 消化器内科


症例は73歳、男性。2015年肺癌、多発脳転移と診断し、化学療法+放射線治療を開始し、脳転移巣は消失した。2016年ニボルマブを開始し、long PRであったが、2018年倦怠感に伴い中止した。原発巣の増悪はなかったが、2019年1月膵酵素の上昇を認め、当科受診した。腹部USでは、膵体部に軽度主膵管拡張を認めた。ダイナミックCTでは、膵頭部、膵体部、膵尾部にやや乏血性で辺縁整な多発性の膵腫大を認めた。MRCPでは、膵腫大部で主膵管の狭窄像を呈したが、貫通像を認めた。DWIでは、膵腫大部で高信号を呈した。EUSでは、膵腫大部は内部の線状高エコーが目立つやや低エコー腫瘤様で、介在する正常膵にも線状高エコー変化が目立ち、境界不明瞭であった。以上から、①肺癌の多発膵転移、②ニボルマブ関連膵炎を第一に疑い、EUS-FNAを施行した。病理では、炎症細胞浸潤が目立たず、軽度の核異型を呈する異型腺管があり、膵管癌と診断した。
2019年3月GEM+nabPTXを開始したが、2コース目終了時に呼吸困難が出現し、薬剤性間質性肺炎の診断で抗癌剤治療を中止しPSL25mgを開始した。PSL5mgまで減量した時点でCT再検すると、多発膵腫大が消失した。偶発的に導入したPSLにより炎症の改善が得られた可能性を考えた。その後、画像所見も改善し、FNA再検でも膵管癌は認めず、ニボルマブ関連膵炎として慎重経過観察中である。
診断時のFNA病理が膵管癌で良いか、免疫チェックポイント阻害薬関連膵炎と診断可能であったかを御討議いただきたい。