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P-19 膵体尾部腫瘤の1例

都丸 翔太1),清水 雄大1,2),吉成夫希子1),松井 綾子1),比佐 岳史3),善如寺 暖2),星  恒輝2),石田 克敏2),鈴木 秀樹4),山崎 文子5),浦岡 俊夫2)
伊勢崎市民病院 内科1),群馬大学医学部附属病院 消化器・肝臓内科2),佐久医療センター 消化器内科3),伊勢崎市民病院 外科4),伊勢崎市民病院 病理診断科5)


症例は57歳男性。Campylobacter腸炎で入院中のCTで膵体尾部に腫瘤性病変を指摘された。既往歴として頸椎黄色靱帯骨化症術後のため半身不全麻痺あり、糖尿病、高血圧、陳旧性心筋梗塞、発作性心房細動あり、C型肝炎治療歴あり持続的ウイルス陰性化を維持している。血液検査ではCEA、CA19-9、DUPAN-2、SPAN-1、IgG4、sIL-2R、カテコラミン3分画、いずれも正常範囲内であった。CTでは膵体尾部に長径56mmの辺縁より漸増性に造影される腫瘤あり、脾動静脈を巻き込んでいるように観察された。MRIではT2WIにて低信号、DWIで淡く高信号であり、MRCPでは主膵管や胆道の拡張所見を認めなかった。EUSでは輪郭比較的平滑、内部不均一な類円形低エコー腫瘤を呈し、内部に明らかな血流シグナルを認めなかった。以上から、浸潤性膵管癌もしくは線維性成分の多い神経内分泌腫瘍を疑い、EUS-FNAを施行した。病理では腺癌を疑う細胞を認め、1か月後に膵体尾部兼脾切除を施行した。切除検体の病理では膵組織内に一部周囲に線維増生を認める被膜組織に囲まれた腫瘍組織を認めた。中心部は変性壊死性で辺縁部では好中球浸潤や線維性組織が認められ、それらの組織間に核小体明瞭な異型上皮細胞が索状、小胞巣状に広い増殖を認めた。腫瘍細胞は分化傾向が不明瞭で胞体の大小や多核形成も広く認め、多形成であった。Cytokeratin AE1/AE3(+)、CD6(-)であり、多型細胞型退形成膵癌pT2 N0 M0:stageIB、R0(UICC 8版)と診断した。術後1年7か月、無再発生存中である。

ご議論頂きたいポイント:診断は退形成膵癌でよいか。術前に診断することは可能であったか。