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P-22 急性膵炎を合併した膵動静脈奇形の1切除例

星川真有美1),大目 祐介1),川本 裕介1),吉田 直樹1),松原麻央樹1),早坂 健司2),佐上 亮太2),堀口慎一郎3),松本  寛1),岡部  寛1),本田 五郎1)
新東京病院 消化器外科1),新東京病院 消化器内科2),都立駒込病院 病理科3)


【症例】54歳女性(既往歴:なし、飲酒:なし、家族歴:妹が子宮癌、乳癌)。約1カ月持続していた食後の心窩部痛が増悪し救急搬送され、急性膵炎と診断された。保存的加療により改善したが、心窩部痛が持続したため精査加療目的に当院へ紹介となった。造影CTで膵頭部と尾部の2か所に拡張した動静脈の蛇行、集簇を認め、尾部の病変より左側に膵実質の腫大と周囲の浮腫、液体貯留を認めた。CEA, CA19-9, DUPAN-2は正常範囲内であり、主膵管の狭窄や明らかな腫瘤性病変を認めなかった。急性膵炎を合併した膵動静脈奇形(AVM)と診断し、膵尾部AVMを含めた左側膵切除の方針とした。腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行し、術後合併症無く第8病日に退院した。病理組織診断では、脾動脈分岐レベルの膵尾部にAVMを認め、同部位より膵尾側に膵炎の所見を認めたが、膵炎との因果関係を示す明らかな主膵管狭窄や腫瘍性病変を認めなかった。AVM部の細動脈~小動脈に血管炎の像を認めた。【考察】膵AVMは、膵内の動脈系と門脈系の異常短絡吻合による腫瘤形成や血流異常を呈する稀な疾患であり、消化管出血や腹痛を契機に診断されることがある。膵炎を合併する症例は稀ではあるが既報があり、盗血による膵実質の虚血が誘因となる可能性が報告されている。AVM部の細動脈~小動脈に血管炎の像との因果関係も含めて、AVMによる膵炎の発生機序について考察したい。