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P-25 術前MCNとの鑑別に苦慮した膵類上皮嚢胞の一例

岩野 光佑1),栗田  亮1),森  義治1),東 俊二郎1),河合 隆之2),上村  良2),寺嶋 宏明2),弓場 吉哲3),八隅秀二郎1)
公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 消化器内科1),公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 消化器外科2),公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 病理診断科3)


症例は70歳代の女性。検診の腹部超音波検査で膵尾部に40mm大の嚢胞性病変を指摘され3年間経過観察されていたが、CA19-9の著明な上昇を認め精査目的に当科紹介となった。腹部超音波検査では膵尾部に40mm大の内部に厚い隔壁を伴う嚢胞性病変を認めた。腹部造影CTで嚢胞性病変の辺縁に造影効果を伴う壁在結節を認めた。腹部MRI検査では嚢胞部分はT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示し、辺縁の充実部分はT1強調画像で軽度高信号、T2強調画像で低信号を示し軽度の拡散制限を認めていた。MRCPでは嚢胞性病変と主膵管の連続性は明らかではなかった。超音波内視鏡検査(EUS)では嚢胞辺縁にcyst in cyst様の構造を認め、隔壁は高エコーに描出され石灰化を反映していると考えられた。上記所見から膵尾部粘液性嚢胞腫瘍(MCN)と術前診断し、腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した。病理組織学的所見では腫瘍全体は境界明瞭な厚い線維性被膜で覆われており嚢胞内腔面は一部重層化した扁平上皮で覆われていたが上皮下に卵巣様間質は認めなかった。嚢胞辺縁の充実部にはリンパ濾胞と脾臓組織が存在し膵内副脾に発生した膵類上皮嚢胞と最終診断した。本症例ではEUSで嚢胞壁にcyst in cyst様の構造を認めたためMCNが疑われ膵体尾部切除術を施行となった。膵類上皮嚢胞の術前診断が可能であったかどうか検討いただきたい。