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P-26 膵頭部充実性腫瘤の一例

細井 愛美1),清水 雄大1,2),吉成夫希子2),松井 綾子2),善如寺 暖1),星  恒輝1,3),石田 克敏1),鈴木 秀樹2),山崎 文子2),浦岡 俊夫1)
群馬大学医学部附属病院 消化器・肝臓内科1),伊勢崎市民病院2),獨協医科大学医学部 内科学(消化器)講座3)


症例は35歳男性。健診腹部超音波検査で膵頭部に腫瘤性病変を指摘され、精査目的で当院紹介となった。血液検査では特記すべき異常なく、CEA 1.2、CA19-9 10.2、NSE 10.3であった。CTでは膵頭部に35mm大の辺縁から漸増性に造影される類円形の腫瘤を認めた。尾側膵管の拡張はなく周囲への浸潤や他臓器・リンパ節転移も明らかではなかった。MRCPでは主膵管圧排や拡張所見はなく、腫瘤内に嚢胞様構造も認識できなかった。EUSでは類円形低エコー腫瘤として描出され、一部に高エコー領域が混在していたが、嚢胞を疑う無エコー域は描出できなかった。腫瘤内の血流シグナルは明らかでなかった。以上から神経内分泌腫瘍(NEN)、充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)、漿液性嚢胞腫瘍(micro-cystic type)を鑑別に挙げ、EUS-FNAを施行した。病理では線維性結合織周囲に核クロマチンの豊富な好酸性胞体有する細胞が増殖しており、免疫染色ではCD56、Synaptophysin陽性、Ki67陽性細胞<2%、ChromograninA弱陽性であった。以上の結果より膵NEN(NET-G1)と診断し、約2ヶ月後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。摘出検体病理では腫瘍細胞は類円形の小型核を有し淡好酸球細胞が偽乳頭状に配列増殖しており、免疫染色ではE?-Catenin、CD56、CD10、Vimentin、Synaptophysin陽性、ChromograninA陰性であった。上記よりSPN pT2N0M0,Stage1B,R0(規約7版)と診断した。なお、この結果を受けてEUS-FNAの標本を遡及して調べるとE?-Catenin陽性であった。ご検討いただきたい点:術前にSPNと診断することは可能であったか。内視鏡医として、どのような時にE?-Cateninを依頼すべきか。