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P-30 狭窄を伴わない限局性主膵管拡張を呈したHigh grade PanINの1例

川本 裕介1),本田 五郎1),大目 祐介1),吉田 直樹1),星川真有美1),佐上 亮太2),早坂 健司2),堀口慎一郎3)
新東京病院 消化器外科1),新東京病院 消化器内科2),がん・感染症センター都立駒込病院 病理科3)


症例は51歳、男性。検診の腹部超音波検査で主膵管の拡張を指摘され当院を受診した。MRI画像で明らかな腫瘤を認めず、MRCPで膵体部に主膵管の限局的な拡張(3.5mm)と同部位に一致した分枝膵管の拡張を認めたが、主膵管径の変化はなだらかで拡張部より膵頭部側に主膵管の狭窄を認めなかった。造影CTでは同様に膵体部の主膵管の限局的な拡張とその周囲の分枝膵管の拡張を認め、同部位に一致した膵実質の萎縮を認めた。EUSでは主膵管拡張部周囲に低エコー域を認めた。以上より膵上皮内癌の可能性を考え、ERPを施行したところ、主膵管拡張部の不整を認めた。粘液流出はなかった。SPACEで異型性の強い細胞が検出されたため、腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した。組織学的には、膵体部の主膵管拡張部を主体としてそこから連続するように分枝膵管内にかけて分布する異型上皮を認め、PanINの所見であった。全体としてはPanIN1、2の病変が主体であったが、主膵管の一部でやや核異型の増した上皮が小乳頭状を呈する箇所が認められ、PanIN-3と診断した。PanINの分布する主膵管周囲には軽度の線維化を認め、そこから連なる嚢胞状の分枝膵管周囲では限局性に腺房の萎縮や線維化を認めた。間質浸潤や脈管浸潤は認めなかった。乳頭状増殖や粘液産生は認めなかった。主膵管狭窄を伴わない限局性の主膵管拡張に分枝膵管の拡張や周囲膵実質の萎縮を伴う所見がPanIN-3の間接所見であることを支持する結果であったと考えられたので報告する。