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P-31 限局性膵管拡張を来したPanIN-2の一例

奴田 絢也1),川路 祐輝1),田村  崇1),糸永 昌弘1),幡丸 景一1),山下 泰伸1),北野 雅之1),岡田 健一2),山上 裕機2),割栢 健史3),村田 晋一3)
和歌山県立医科大学 第二内科1),和歌山県立医科大学 第二外科2),和歌山県立医科大学 病理診断学科3)


症例は76歳、女性。膵管拡張の精査目的に当科紹介。造影CTで膵体尾部に限局した主膵管拡張(5mm)を認めた。明らかな膵管狭窄や腫瘤像は認めず(Figure1)。MRCPでは体部主膵管に限局性の狭窄および尾側膵管の拡張(4mm)を認めた(Figure2)。EUSでは主膵管狭窄は明らかでなく、体尾部に主膵管拡張(4mm)を認めた。明らかな腫瘤像を認めず(Figure3)。主膵管拡張の精査目的にERPおよび膵液細胞診を施行。ERPでも主膵管に明らかな狭窄はなく、体尾部主膵管に軽度拡張(2.2~3.8mm)を認めた。膵液細胞診ではN/C比の大きい細胞集塊を認めた(CLASS V)。膵上皮内癌と診断し、尾側膵管の拡張の原因と考えた。膵体尾部切除術を施行。病理標本では、軽度拡張した主膵管に低乳頭状の異型上皮増殖がみられ、ごく一部に、核極性の乱れと核腫大と明瞭な核小体を認めるも、悪性とするだけの異型はなく、PanIN-2と診断された(Fugure4)。主膵管拡張の原因はその中枢側主膵管周囲の線維化によるものと考えられたが、線維化の原因は不明であった。
本症例では、画像上、体尾部に限局した膵管拡張を認めたが、その中枢側の膵管狭窄はMRCPでのみ描出され、CT、EUS、ERPでは明らかでなかった。病理では拡張膵管に異型上皮を認めたが、悪性とするだけの異型はなく、PanIN-2の結果であった。中枢側主膵管周囲の線維化が主膵管狭窄の原因と考えられたが、線維化の原因は不明であった。病理診断はPanIN-2でよいか、主膵管狭窄部周囲の線維化の原因は何か、術前にPanIN-2の診断は可能であったかをご教授頂きたい。