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O-2 CTHAで流出静脈が明瞭に描出された肝神経内分泌腫瘍の一例

小林 知博1),小坂 一斗1),米田 憲秀1),北尾  梓1),香田  渉1), 小林  聡4),池田 博子2),原田 憲一3),蒲田 敏文1),松井  修1)
金沢大学附属病院放射線科1),金沢大学附属病院病理診断科2)
金沢大学医薬保健研究域医学系人体病理学3)
金沢大学医薬保健研究域保健学系4)


症例は70代男性。HbA1c値の増悪にて施行された腹部超音波検査で肝S7腫瘤が指摘され、精査加療目的に当院紹介受診。
造影前CTでは腫瘤は4cm大の分葉状低吸収を呈し、1cm前後の嚢胞状低吸収を示す領域の混在を認めた。造影ダイナミックCT動脈優位相から腫瘤は不均一に濃染し、門脈相から平衡相では周囲肝実質より低吸収となる部分と背景肝と同程度の造影効果が持続する領域を認めた。腫瘤内の嚢胞様領域には造影効果は認めなかった。
MRI化学シフト画像で脂肪成分は検出されず、HB phaseでは低信号であった。CTで嚢胞様低吸収を示した部分はT2強調像で著明高信号を示した。
F18-FDG-PET/CTではごく軽度のFDG集積を一部に認めた。
腫瘤はCTAPで門脈血流欠損、CTHA早期相で不均一に濃染し、後期相で腫瘤周囲に薄いrim状濃染を認め、肝静脈と直接連続しており、腫瘤血流は肝静脈への“直接ドレナージ”しているものと考えられた。病変は単発であり、遠隔転移を示唆する所見もなく、後区域切除が施行された。
腫瘤は肉眼的に不均一な茶色調を示し、組織学的に神経内分泌腫瘍(G2)と診断された。その後施行されたソマトスタチン受容体シンチグラフィでは異常集積は認められず、術後3年経過時点で、肝以外の原発を疑う病変の顕在化は認めていない。
肝神経内分泌腫瘍は非常に稀であり、また流出静脈の描出が明瞭であることが特徴的な症例であったため、文献的考察を加えて報告する。


<DICOM画像掲載無し>