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O-3 門脈圧亢進症を併発した巨大肝海綿状血管腫に対してTAE後に切除した1例

木村 恭彰,相澤 栄俊,遠藤 裕平,前田 晋平,渡部 文昭,加藤 高晴,
野田 弘志,力山 敏樹
自治医科大学附属さいたま医療センター


症例は75歳男性。2020年10月から食思不振と倦怠感を自覚し、検診の上部消化管内視鏡で食道静脈瘤を認め、前医を受診となった。造影CT検査で肝右葉に巨大腫瘤を認め、動脈相から平衡相にかけ辺縁が遷延性に造影されており血管腫が考えられた。腫瘍部でAPシャントを形成し動脈相で門脈本幹までが造影され、腹水貯留も認めた。巨大血管腫に伴うAPシャントから門脈圧亢進症が生じたと考えられた。2021年3月に当院消化器内科を紹介受診となり、内科的治療では治療困難となり当科と放射線科に治療相談となった。腹水コントロールが難しい門脈亢進状態での手術はリスクが高いと判断し、門脈圧低下を企図し肝動脈塞栓術(TAE)を行う方針とした。計3回肝右葉のTAEを施行し門脈圧亢進を軽減させたが、TAEで完全にシャント血流を途絶えることは困難であり、根治目的に切除を行う方針となった。最終TAEから10日後に肝右葉切除術を施行した。TAE後の影響や門脈圧亢進に伴い易出血性であり、肝離断に難渋したが無事切除し得た。術後肝離断面近傍の血腫遺残に伴い炎症反応上昇を認めドレナージを要したが、保存的に軽快し術後第30病日に退院となった。病理学的検査で肝海綿状血管腫の診断となった。
門脈圧亢進症を併発した巨大肝海綿状血管腫の切除例を経験したため文献的考察を加え報告する。
治療方針・経過に関して、他施設の意見を頂き協議できればと思います。