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O-5 自己免疫性膵炎の維持療法終了後に膵体部癌を発症した症例

仲程  純1,3),菊山 正隆1),堀口慎一郎2),千葉 和朗1)
田畑 宏樹1),神澤 輝実1)
がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科1),がん・感染症センター駒込病院病理科2),順天堂大学人体病病態学講座3)


症例 78才 男性。200X-7年、膵体尾部腫大の精査のため受診した。IgG4 200mg/dlとCTではrimを伴う膵体尾部腫大を認めた。MRIで拡散制限はなく膵体尾部の狭細像を認めた。ERPで膵体尾部の膵管狭細像を認めたが、分枝膵管は造影され悪性を示唆する所見は認めなかった。膵液細胞診断では悪性所見は無く、EUS-FNAでは典型的な自己免疫性膵炎の所見はないが悪性所見もないため、自己免疫性膵炎と診断しステロイド導入した。ステロイド導入から2週間後のMRIでは膵管の狭細像は残存していたが膵腫大は軽快したため、以後は漸減し維持療法を継続していた。経過中、半年から一年の間に画像で経過観察し、膵管の狭細像は残存していたが、再燃所見は認めなかった。200X-5カ月のMRIでも再燃所見は認めず、200X-1ヶ月に維持療法を終了したが、200X年に人間ドックで施行したPETで膵体部に集積を認めたため、精査を施行した。CTでは以前膵腫大所見があった領域に27mm大の低吸収腫瘤が出現し、MRIでは拡散制限も認めた。MRCPでは膵体部の膵管狭窄が顕著になり、尾側膵管の拡張を認めた。同部位に対しEUS-FNAを施行し、腺癌の診断となり、遠隔転移は認めず、放射線化学療法後に膵体尾部切除した。自己免疫性膵炎の長期経過観察中に発症した浸潤性膵癌の症例であり、自己免疫性膵炎が膵癌の発癌に関与したのか、または初期の腫瘍化が自己免疫性膵炎を誘導したのか、病理学的な所見を含め討論したい。