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O-9 特異な画像を呈した膵神経内分泌癌の1例

阿部 晶平1),酒井  新1),山川 康平1)辻前 正弘1),山田 恭孝1)
田中 雄志1),小林  隆1),増田 充弘1),神澤 真紀2),児玉 裕三1)
神戸大学医学部附属病院消化器内科1),神戸大学医学部附属病院病理診断科2)


症例は60歳代女性。前医にて慢性膵炎が疑われ当院紹介となった。飲酒歴はなく、血清IgG4も32 mg/dlと正常であった。造影CTでは、膵体部の主膵管が軽度拡張しているものの、明らかな腫瘤は指摘できなかった。また、両側副腎のびまん性腫大をみとめた。EUSでは、膵実質は頭部の一部を除いて全体に低エコーで、緊満感を認めていた。典型的ではないが自己免疫性膵炎を疑い、膵体部・尾部よりEUS-FNAを施行した。病理組織学的所見ではいずれもN/C比の高い異型細胞が密に増殖していたが、Ki-67陽性細胞は10%程度と少数であった。免疫染色では腫瘍細胞はchromogranin Aなど陽性で神経内分泌分化を有していた。p53はごくわずかに弱陽性を示し、Rb発現は保持されていた。低いKi-67標識率など典型的ではない所見があるものの、細胞形態からは神経内分泌癌(NEC)、特に小細胞癌が最も考えられた。腫大した左副腎からも組織採取を行ったが、同じくNECの診断であった。診断後に撮影したFDG-PET/CTでは膵臓、両側副腎、肺門部、胸骨に集積亢進を認めた。ソマトスタチン受容体シンチグラフィーでは異常集積を認めなかった。腫瘍マーカーは、Pro-GRP 6961 pg/ml、NSE 34.9 pg/mlと高値であった。以上の所見より、膵NECの多発転移と診断した。肺小細胞癌に準じて化学療法を行う方針となった。極めて特異な画像を呈した膵神経内分泌癌の症例を経験したため報告する。