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O-14 急性膵炎を契機に発見した膵管内病変の1例

河俣 真由1),山田 玲子1),木戸 恒陽1),前川 有里1),梅田 悠平1),坪井 順哉1),村田 泰洋2),水野 修吾2),林  昭伸3),中川 勇人1)
三重大学医学部附属病院消化器肝臓内科1),三重大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科2),三重大学医学部附属病院病理部3)


【症例】78歳、女性【既往歴】甲状腺機能低下症、高血圧症【家族歴】なし【現病歴】X-3年に他院で膵嚢胞を指摘されたが、経過観察となっていた。X-2年10月に急性膵炎で前医に入院、入院時CTで主膵管拡張を認め、精査目的に当院紹介となった。造影CT、MRI、EUSでは明らかな腫瘤は指摘できないものの、膵体部に嚢胞と嚢胞近傍に限局性の膵萎縮を認め、膵萎縮から尾側の主膵管は軽度拡張していた。ERPで膵体部に軽度の主膵管狭窄とその尾側に3.2mmの主膵管拡張を認めた。狭窄部を越えて5Fr.ENPDチューブを留置し、SPACEを計6回施行するも陰性であった。経過観察の方針とし、定期的に各種画像検査を施行するも著変なく経過した。しかし、X年6月のMRCPで嚢胞の増大と尾側主膵管の拡張を認め、再度精査を行った。CT、EUSでは初回精査時と同様に腫瘤を認めず、膵体部嚢胞と尾側の主膵管拡張を認めた。ERPカテーテルでの吸引細胞診、ブラシ細胞診、および計6回のSPACEのうち1回目と6回目で疑陽性の所見を得た。早期膵癌cTisN0M0の診断で、腹腔鏡下脾合併膵体尾部切除術を施行した。病理学的所見では、嚢胞は細胞質に粘液を含有する高円柱上皮で裏打ちされていた。一方、主膵管に異型と思われる所見も認めたが、腫瘍性病変の診断には至らなかった。【討議点】膵萎縮を伴う膵管狭窄より臨床的に膵癌を疑った。上皮内癌の有無、嚢胞の成因についてご討議いただきたい。