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O-16 術前に上皮内癌との鑑別が困難であった限局性主膵管狭窄の
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池田恵理子1,2),菅野  敦1),三輪田哲郎1),安藤  梢1,2)
長井 洋樹1), 横山 健介1),笹沼 英紀3),玉田 喜一1)
佐田 尚宏3),福嶋 敬宜2)
自治医科大学内科学講座消化器内科部門1),自治医科大学病理診断部2)
自治医科大学外科学講座消化器一般移植外科部門3)


68歳、女性。20XX年10月に非典型溶血性尿毒症症候群(Atypical Hemolytic Uremic Syndrome:aHUS)による腎不全と診断され、血液透析が導入された。20XX+1年4月に1ヶ月で7kgの体重減少が認められた。単純CTで前年には認められなかった主膵管拡張を指摘され、当院消化器内科に紹介された。造影CT・MRCPで膵体部に主膵管狭窄を認め、尾側の主膵管拡張を伴っていた。腫瘤は認識できなかったが、膵実質は主膵管狭窄部で限局性に萎縮していた。EUSでも主膵管狭窄部周囲には腫瘤は指摘できなかった。ERPで膵体部に狭窄長の短い主膵管狭窄が認められた。主膵管狭窄部近傍で造影剤を圧入しても主膵管は拡張せず、硬い狭窄であることが推測された。主膵管狭窄部の擦過細胞診・連続膵液細胞診を施行したが、悪性所見は得られなかった。画像診断では良悪性の鑑別が困難であったため、当院消化器外科にて腹腔鏡下膵体尾部除術を施行した。病理組織学的には、主膵管狭窄部周囲に線維化を認めるのみで、狭窄部周囲の膵管には異型上皮を認めなかった。主膵管狭窄部より尾側では、楔状の領域性のある非常に高度な線維化や脂肪置換が認められた。また、背景膵実質の小動脈に内膜肥厚や内腔の閉塞を示す所見が散在していたことから、aHUSによる局所の虚血によって末梢の随伴性膵炎が生じ、限局性の主膵管狭窄を来したと推測した。限局性主膵管狭窄の画像所見における良悪性の鑑別に関して議論させていただきたい。