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O-18 微小浸潤像を伴った広範囲High-grade PanINの1例

川本 裕介1),本田 五郎1),松永雄太郎1),植村修一郎1),大目 祐介1),樋口 亮太1),千葉 和朗2),菊山 正隆2),堀口慎一郎3),古川  徹4)
東京女子医科大学消化器・一般外科1),がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科2),がん・感染症センター都立駒込病院病理科3),東北大学医学系研究科病態病理学分野4)


【症例】症例は79歳、女性。健診の腹部超音波検査で膵嚢胞を指摘された。MRI検査で、膵体部から尾部にかけて分枝膵管の拡張を疑う嚢胞性病変の集簇と同部位の限局的な主膵管の拡張、不整を認め、嚢胞性病変が集簇する部位に一致して限局性の膵実質萎縮を認めた。EUS検査では、嚢胞性病変の集簇を認めた部位の主膵管周囲に境界不明瞭な低エコー域の広がりが確認された。両検査およびCT検査において、主膵管に明らかな狭窄はなく、腫瘤性病変も認めなかった。以上より膵上皮内癌の可能性を考えSPACEを施行したところ、膵癌を疑う異型細胞が検出された。膵体尾部の上皮内癌を強く疑い、門脈右縁を切離ラインとする腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した。病理組織学的に、切除した膵臓のほぼ全長にわたって主膵管およびその近傍の分枝膵管に連続性に広がるHigh-grade PanINを認め、膵体部ではPanIN病変を有する部位の主膵管壁外への微小浸潤像が認められた。脈管浸潤、リンパ節転移は認めず、最終的にStage IA(浸潤部の最大径は1mm)の膵体部癌と診断した。
【結語】High-grade PanIN病変からの微小浸潤を示唆する像が観察された症例を経験した。