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O-19 8年にわたる長期画像経過を知り得た膵上皮内癌の1例

倉石 康弘1),奥野のぞみ1),桑原 崇通1),羽場  真1),水野 伸匡1),清水 泰博2),細田 和貴3),原  和生1)
愛知県がんセンター消化器内科部1),愛知県がんセンター消化器外科部2),愛知県がんセンター遺伝子病理診断部3)


症例は70歳代女性。2011年に当院で耳下腺癌に対し手術を施行し(腺様嚢胞癌,pT1bNxM0 StageI)、以降定期的な画像フォローを行っていた。2012年より膵尾部にわずかな主膵管拡張が出現し、徐々に拡張が目立つようになり、2019年に精査目的に当科紹介となった。腫瘍マーカーや膵酵素は正常だった。CTでは膵尾部に尾側の主膵管拡張を伴う狭窄を認め、同部位で膵実質の萎縮を認めたが腫瘤は認めなかった。EUSでは拡張膵管のやや頭側に7mm大の低エコー腫瘤を認め、25G針を用いて同部位を1回穿刺した。細胞診で腺癌の診断であり、遺伝子検査ではKras変異を認めた。長期間にわたり膵管狭窄が存在していたことから、上皮内癌が広範囲に進展している可能性を考慮しERPも施行したが、尾部以外病変を認めなかった。その際に施行した膵液細胞診は陰性であった。膵尾部癌cT1bN0M0 StageIAの診断で膵体尾部脾合併切除術を施行した。術後新鮮標本では、腫瘤は触知できず、標本造影では膵尾部主膵管の不整と尾側の拡張を伴う主膵管狭窄を認めた。
病理所見は、主膵管および分枝膵管内にPanIN-3の所見を認めたが、明らかな浸潤部位はなかった。また、尾側の拡張した膵管内には腺腫成分を認めた。最終診断は、pTisN0M0 Stage0の膵尾部癌であった。
本例は、後方視的に8年にわたるCT画像経過の振り返りが可能な貴重な症例と考える。膵上皮内癌の成り立ちや進展範囲など画像診断や病理所見についてご討論頂きたい。