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P-5 潰瘍性大腸炎に合併し、2型自己免疫性膵炎の診断に至らなかった腫瘤形成性膵炎の一例

水上 耀介,岩崎 栄典,川崎慎太郎,北郷  実,眞杉 洋平,金井 隆典
慶應義塾大学病院


【症例】63歳、女性。【現病歴】28年前より潰瘍性大腸炎に対し外来治療を受けており5-ASA製剤で寛解維持されていた。健診で施行されたPET-CT検査で集積亢進を示す10mm大の膵尾部結節を指摘され、精査目的に来院した。血液検査所見では血清IgG4値は低値であり腫瘍マーカーはいずれも基準範囲内であった。造影CTでは膵実質相、遅延相にかけて淡く不明瞭な造影効果を示し、超音波内視鏡検査では、境界明瞭で、周囲に血流が目立つ多血性結節であった。腫瘤形成性膵炎や自己免疫性膵炎(AIP)の他、神経内分泌腫瘍や腺房細胞癌、通常型膵癌が鑑別として考慮され腹腔鏡下膵体尾部切除術が施行された。切除検体の病理組織学的検査では、膵管の破壊像、小葉隔壁の線維化の他、リンパ球や形質細胞を主体として膵管上皮内への炎症細胞の浸潤を認めたが、好中球浸潤を伴う膵管像は少数であった。またIgG陽性細胞は多数認められたものの、IgG4染色では弱陽性細胞は1-3/高倍率視野と少数であった。潰瘍性大腸炎の合併もあり臨床的に2型AIPも十分に考えられたが、病理組織学的に腫瘤形成性膵炎の診断に留まった。【考察】潰瘍性大腸炎に合併し、2型AIPの診断に至らなかった腫瘤形成性膵炎の一例を経験した。AIPあるいは腫瘤形成性膵炎と悪性腫瘍との鑑別はしばしば困難であり治療方針は慎重に決定する必要がある。