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P-7 診断に難渋した髄膜種の既往を持つ症例に発生した膵多発腫瘍の一例

吉田 晃浩1),山雄健太郎1),竹中  完1),工藤 正俊1),松本 逸平2),鶴崎 正勝3),筑後 孝章4),天野 良亮5)
近畿大学病院消化器内科1),近畿大学病院肝胆膵外科2),近畿大学病院放射線診断科3),近畿大学病院病理診断科4),大阪市立大学大学院肝胆膵外科5)


症例は69歳、男性。既往に10年前に髄膜種の手術歴あり。嗜好歴は喫煙なし、飲酒なし。2021年3月肝腫瘍の精査目的に施行した画像検査で膵臓に多発する腫瘍を認めた。USでは膵頭部に隣接する14mm、10mm大の辺縁整、境界明瞭な低エコー腫瘤を認めた。造影CTでは膵実質よりもやや多血性でかつ遅延性に染影される腫瘤像であった。MRIでは各病変はT1でやや低信号、T2でやや高信号、DWIで高信号であった。EUSでは指摘病変は膵頭部に18mm、12mmの境界比較的明瞭で、その中心に高エコーの線状帯を有する低エコー腫瘤として描出され、加えて頭部に6mmの腫瘤を認めた。鑑別疾患として多発している点からpNENを第一に考えEUS-FNAを施行。HE染色では紡錘形の異型細胞が束状・渦状に増生し、免疫染色ではCD34陽性・bcl-2陽性・STAT6陽性の結果であり、solitary fibrous tumor(SFT)の診断を得、手術施行となった。過去の脳腫瘍の手術検体を再検討すると、免疫染色ではEMA染色陰性などからhemangiopericytoma(HPC)の診断で、FNA検体と同様の病理像であり、本症例は脳腫瘍術後10年後に発生したHPCの膵転移と最終診断した。HPCは1993年WHO分類で髄膜腫から独立した腫瘍として取り扱われる腫瘍であり、2016年のWHO分類改定によりHPCとSFTは同一疾患として取り扱われている。転移性膵腫瘍の中でもSFTは稀な疾患であるが、術前画像検査でどこまで診断が可能であったかを検討頂きたい。