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P-8 術前診断困難だった多発膵腫瘤の1例

宮本 明香1),芹川 正浩1),石井 康隆1),壷井 智史1),津島  健1),中村 真也1),平野 哲朗1),池本 珠莉1),有廣 光司2),相方  浩1)
広島大学病院消化器・代謝内科1),広島大学病院病理診断科2)


症例は80歳代男性。前医に尿路感染症で入院した際に施行したUSで、膵体部に低エコー腫瘤を認め、精査目的に当院へ紹介となった。血液検査では膵酵素異常や、IgG4と腫瘍マーカーの上昇は認めなかった。USでは膵体部に13mm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤を認めた。CT検査では、膵内に腫瘤性病変は指摘できなかった。MRIでは、頭部から尾部にかけて、拡散強調像で高信号を示す腫瘤の多発を認めた。EUSでは、膵頭部から尾部にかけて境界不明瞭で内部不均一な低エコー腫瘤が多発していた。ERPでは、主膵管に異常所見は認められず、膵液細胞診でも悪性所見は認めなかった。膵体部腫瘤からのEUS-FNAを施行し、小型ないし中等大、索状を示す異型上皮組織を認め、免疫染色でβ-catenin核(-)、chromogranin A(-)、synaptphysin(-)、Bcl 10(弱く+)であり腺房細胞癌が疑われた。膵腺房細胞癌と診断し、膵体尾部脾合併切除術、リンパ節郭清術を行った。術後病理では、リンパ濾胞を伴う異形リンパ球様細胞を多数認め、膵内に腺房細胞癌を疑う所見は認めなかった。follicular lymphomaを疑い免疫染色を行うと、CD10(+)、CD20(+)、Bcl 2(-)であり、follicular lymphomaは否定的な結果だった。濾胞形成を伴う慢性膵炎の像であり、follicular pancreatitisの最終診断となった。
【検討項目】病理学的にfollicular pancreatitisの診断で矛盾しないか。また、画像診断で診断可能だったかどうかについて検討頂きたい。