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P-12 嚢胞性膵悪性腫瘍との鑑別が困難であった限局腫瘤型1型AIPの1例

草加 裕康1),小川 恒由1),矢杉 賢吾1),日置 勝義2),重西 邦浩3),能登原憲司4),植木  亨1)
福山市民病院内科1),福山市民病院外科2),福山市民病院病理診断科3),倉敷中央病院病理診断科4)


40歳代女性.腹部超音波検査にて膵体部に15mm大の低エコー腫瘤を認めた.同病変は造影CTで門脈相から平衡相にかけて遅延性濃染し,内部に小嚢胞が疑われた.MRIではT1W1淡い低信号,T2WI淡い高信号,DWI高信号を呈し,内部に小嚢胞を伴っていた.EUSでは膵体部に10.6×19.4mm大の境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され,カラードプラで腫瘤内部の血流も確認された.また内部に小嚢胞を疑う無エコー域を認め主膵管と連続が疑われた.さらに脾門部近傍の膵尾部にも8.2×5.8mm大の低エコー腫瘤を認めた.嚢胞周囲の低エコー腫瘤部分からEUS-FNA施行.N/C比の高い小型類円形細胞を認めた.ERPでは膵体部腫瘤の嚢胞と主膵管の交通を認めたが,主膵管に変化は認めなかった.FDG-PET/CTでは膵体部にSUVmax 3.33の淡いFDG集積を認めた.以上より,嚢胞変性したNET,SPN,ACC,腫瘤形成性膵炎を鑑別に挙げ,十分なICのもと腹腔鏡下膵体尾部切除術施行.病理組織では膵体部に14×6mm大の小葉の萎縮及び小葉間の線維化,リンパ濾胞を多数認めた.IgG4陽性細胞は>10個/HPF,IgG4/IgG陽性細胞比40%を認め,消退した1型AIPが示唆された.また,同部位の拡張した分枝膵管内にlow grade PanINも併存していた.EUSで指摘された脾門部近傍の膵尾部病変は導管及びラ氏島の増生,線維化をきたした5mm大の領域に相当し,限局性膵炎の修復像と考えた.討論点:限局腫瘤型AIPと診断された画像と病理,分枝拡張の原因,膵尾部病変の限局性膵炎が発生した原因.