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P-13 膵腺房細胞癌の一切除例

寺部 寛哉,1),岡部 義信1),内藤 嘉紀2),金城 賢尚3),矢野 雄太3),牛島 知之1,4),平井 真吾1),島松  裕1),赤司 昌謙5),酒井 久宗5)
久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門1)
久留米大学医学部病理学講座2),久留米大学病院病理診断科・病理部3)
久留米大学病院がん集学治療センター4),久留米大学医学部外科学講座肝胆膵外科部門5)


75歳男性,特記既往歴なし.201X年3月,急性膵炎を発症し,前医で保存的に加療された.その際のCTで膵尾部主膵管拡張(4mm)を指摘された.同年8月に実施したERPで膵体部主膵管の途絶像をみたが,膵液細胞診で腫瘍細胞は検出されなかった.経過観察の翌年2月のCTで,主膵管拡張(6mm)が増悪し当科紹介となった.腫瘍マーカーのCEA/CA19-9/DUPAN2/Span1はいずれも正常域だった.造影CTでは,尾側膵管拡張を伴う20×10mm大の淡い造影効果を有する膵体部腫瘤をみたが,膵管CPR像では腫瘍の一部で膵管内に存在しているようにみえた.EUSでは,膵体部に辺縁不整な低エコー腫瘤と尾側膵管拡張と膵管内への腫瘤の進展像がみられた.造影MRIで腫瘤はT1強調像で低信号,T2強調像で等信号を呈し,拡散強調像で拡散抑制がみられた.PET-CTでは,同部に異常集積(SUVmax=3.2→4.6)をみた.以上の画像診断より通常型膵癌あるいは膵管内腫瘍を疑った.EUS-FNAでは低分化腺癌と診断し,膵体尾部切除術を施行した.摘出病理組織診断は腺房細胞癌(ACC:Acinar cell carcinoma)で,腫瘍の一部は主膵管内に充満するように発育しており,一部膵実質内にスキップ病変もみられた[pStageIIA].術後の経過観察中に,残膵の主膵管内に充満するような形態で再発を認め,初回手術の1年9ヶ月後に残膵切除が行われた.
本症例は,ACCの膵管内進展と初回術前診断が可能であったか,ご検討いただきたい.