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P-17 腹部エコーを契機に診断できた小膵癌の1例

田中 利幸1),植木 敏晴1),丸尾  達1),松岡 大介1),後野 徹宏1),永山林太郎1),土居 雅宗1),宮坂 義浩2),小野 貴大3),二村  聡3)
福岡大学筑紫病院消化器内科1),福岡大学筑紫病院外科2),福岡大学筑紫病院病理部3)


症例は70歳代の男性.飲酒歴あり,膵癌の家族歴なし.高血圧症,脂質異常症,耐糖能異常で近医通院中.2020年6月にスクリーニング目的で行った腹部エコーで膵体部に径10mmの低エコー腫瘤を指摘され,当院へ紹介となった.膵酵素(アミラーゼ 80 U/L,リパーゼ 25 U/L)や腫瘍マーカー(CEA 2.9 U/mL,CA19-9 7.7 U/mL)は正常範囲内であった.Dynamic-CTでは膵腫瘤を指摘できず,主膵管の拡張はなかった.造影EUSでは腫瘤は周囲膵に比し早期に造影され,wash outされた.MRI上,拡散強調像で拡散制限が疑われたが,ADCでは低信号ではなかった.ERPでは,体部主膵管に限局的狭窄を認めたが,尾側膵管の拡張はなく狭窄部の分枝膵管は描出された.膵液洗浄細胞診はClassIIであった.経皮的膵腫瘍生検で,膵体部癌と診断し,2020年7月に腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.最終病理診断は膵体部癌StageIIA(TS1(15mm),T3,N0,M0)であった.10月より術後化学療法として,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(100mg/日、隔日投与)を開始した.現在,術後16ヵ月経過しているが,無再発生存中である.今回,生活習慣病の経過観察中に,腹部エコーを契機に診断できた小膵癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.