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O-17 膵液細胞診よりもEUS-FNAが有用であった微小浸潤癌の1例

池田 恵理子1)、牛尾 純2)、川崎 佑輝2)、横山 健介2)、多田 大和2)、森嶋 計4)、笹沼 英紀4)、玉田 喜一3)、佐田 尚宏4)、福嶋 敬宜3)
自治医科大学内科学講座 消化器内科部門・病理診断科1)、自治医科大学内科学講座 消化器内科部門2)、自治医科大学 病理診断科3)、自治医科大学 消化器・一般外科4)


症例は、糖尿病増悪を契機に膵癌スクリーニングを勧められた75 歳、男性。CT で膵頭部にある15mm大の嚢胞と膵体尾部主膵管拡張を指摘され、当院に紹介となった。CT では腫瘤は指摘できなかったが、EUS(radial) では膵頭部の背側膵領域の嚢胞に接した境界明瞭で辺縁不整な12mm 大の低エコー腫瘤を認めた。MRI でも膵頭部にT2 強調画像で淡い高信号、拡散能低下を認め、膵頭部癌と診断した。ERP ではWirsung 管とSantorini 管の合流部付近の主膵管が狭窄していた。ERP での狭窄像とEUS での腫瘤像より、浸潤癌と推測した。SPACE では悪性所見が得られなかったため、EUS(convex) を再検したところ、やはり境界明瞭な低エコー腫瘤を認めた。そこでFNA を行い細胞診で腺癌細胞の像がみられたため、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。 本症例は切除検体に対して水侵下の超音波走査を行い、腫瘍の局在を明らかにした上で、連続薄切標本を作成した。病理組織学的には、Wirsung 管とSantorini 管の合流部付近の主膵管と分枝膵管に広範囲なhigh-grade PanIN を認め、主膵管狭窄部に一致して10mm 程の腫瘤状の線維化を認めた。2 箇所に2mm 未満の浸潤所見を認めたのみであり、微小浸潤癌と診断した。 本症例は術前に微小浸潤癌と診断できたかどうか議論いただきたい。