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O-26 膵管内腫瘍 Intraductal tubulopapillary neoplasm (ITPN)の一例

益田 朋典1)、松森 友昭1)、吉田 裕幸1)、清水 孝洋1)、高橋 健1)、宇座 徳光1)、妹尾 浩1)、秦 浩一郎2)、羽賀 博典3)
京都大学医学部付属病院 消化器内科1)、同 肝胆膵・移植外科2)、同 病理診断科3)


症例は78 歳男性。近医の上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部癌を認め、造影CT で膵尾部の主膵管拡張・腫大が指摘されたため、当科紹介。MRI/MRCP では、尾側膵管に途絶・拡張を認め、膵尾部は全体にT2WI で低信号、DWI で拡散低下があり、膵尾部のびまん性病変が疑われた。EUS では、十二指腸乳頭の腫大や開大は認めず、膵尾部の主膵管内に充満する低エコー腫瘤を認め、ソナゾイド造影で同腫瘤は早期に造影された。腫瘤の質的診断、進展度診断目的にERP を施行したところ、膵尾部の主膵管に不整で硬い狭窄を認め、ガイドワイヤーの挿入も困難であった。狭窄部のブラシ細胞診・生検より膵癌と診断した。非典型的な画像所見であったが、ITPN など膵管内腫瘍を呈する腫瘍や通常型膵癌と考え、膵尾部切除術を施行した。病理所見では、膵管内を首座とする管状・篩状に増殖する腫瘍組織を認め、腫瘍部は腺管成分と神経内分泌細胞に分化して見える成分が混在していた。免疫染色で、βカテニン( 細胞膜)、CK7 が陽性、Synaptophysin、chromogranin A、 bcl10、 MUC1/2/5AC/6、 CK20 が陰性であったことより、ITPN の診断となった。背景膵に腫瘍本体と同様の小病変が多発しており、ITPN としては非典型であった。本症例は膵臓のITPN とは異なる組織像の胃癌、大腸癌の合併もあり、遺伝子異常を背景に発生した特異な膵腫瘍と考えられた。本症例の診断の妥当性、多発病変の意義、由来などについて御検討いただきたい。