室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。


P-10 主膵管内に充満した粘液産生に乏しいpancreato-biliary type IPMNの1例

中野 遼太1)、酒井 新1)、辻前 正弘1)、小林 隆1)、増田 充弘1)、塩見 英之1)、外山 博近2)、伊藤 智雄3)、児玉 裕三1)
神戸大学医学部付属病院 消化器内科1)、神戸大学医学部付属病院 肝胆膵外科2)、神戸大学医学部付属病院 病理診断科3)


症例は76 歳女性。定期血液検査で高血糖を認め、CT で膵腫瘤を認めたため、当院紹介受診となった。造影CT では、膵頭部に乏血性腫瘤性病変、及び尾側の主膵管拡張を認めた。FDG-PET/MRI では、膵頭部主膵管に沿ったFDG の集積を認めた。EUS では、膵頭部主膵管内に低エコー腫瘤を認めた。側視鏡による乳頭部の観察では、乳頭開口部の開大や開口部からの粘液分泌はなく、主膵管に充満する結節性腫瘤の存在が示唆された。ERP では膵頭部の主膵管は狭窄し、これより尾側膵管の拡張をみとめた。IDUS では膵頭部の主膵管狭窄部に一致して、主膵管内に低エコー腫瘤像をみとめた。これらの所見から、Intraductaltubulopapillary neoplasm (ITPN)、もしくは主膵管型Intraductal papillary mucinous neoplasm (IPMN) が疑われた。遠隔転移や主要血管への浸潤を疑う所見をみとめないため、手術の方針となり、亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された。切除標本は、肉眼的には粘液分泌の乏しい、主膵管を占拠する充実性腫瘍であった。組織学的には、主膵管内を充満する様に上皮内癌相当の異型細胞が乳頭状に増殖しているが、粘液の過剰産生は見られなかった。免疫染色では、MUC1 陽性、MUS2 陰性、MUC5AC 一部陽性、MUC6 陰性であった。以上より、膵管内病変はpancreato-biliary type のIPMN と考えられた。病変の一部で浸潤癌の像が見られ、IPMN と浸潤癌は連続性が見られることから、IPMN 由来浸潤癌と考えられた。