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P-13 術前は乳頭部癌と診断され,リンパ節ごとに分化度の異なる転移がみられた膵癌症例

加藤 喬1)、北川 裕久1)、河本 和幸1)、石田 悦嗣2)、内野 かおり3)、能登原 憲司3)
倉敷中央病院 外科1)、同 消化器内科2)、同 病理診断科3)


症例は73 歳男性, 皮膚黄染を契機に精査が行われ, ERCP の直視像ではVater 乳頭は腫大した炎症による糜爛を認め, 非露出型の乳頭部腫瘍と考えられた. 造影では乳頭部で狭窄を認めたため狭窄部位で擦過細胞診を行い, class Ⅴ,Adenocarcinoma を認めた. 乳頭部の生検では,間質変化を認めるのみで腫瘍細胞は認めなかった. CT ではVater 乳頭近傍に1.8㎝大の腫瘤を認め, 漸増性の造影効果を認め, 総胆管と主膵管を閉塞し上流で拡張を認めていた. 以上より十二指腸乳頭部癌により閉塞性黄疸をきたしているものと診断し,PPPD- Ⅱ-A-1(D2)を施行した. 切除標本の病理では, 乳頭部に浸潤をきたした膵癌で,主座はVater 乳頭の頭側と診断された. 組織は索状から小集塊を形成して浸潤する低分化腺癌が優勢だが腺管形成を示す中分化管状腺癌の成分も伴っていた. 主膵管では管状腺癌が内腔に突出している像が多くみられ, また近傍にPanIN2-3 相当の病変を伴っていることが膵癌の根拠とされた. また, IPMN も伴っていた. リンパ節転移を7 個認め, 6 個は低分化腺癌であったが, 1 個は胞体に豊富な粘液持つ高分化腺癌の転移であった. 本症例について,①診断に関して,術前より膵癌と診断できなかったのか,②リンパ節転移に関して,転移リンパ節7 個のうち6 個は低分化,1 個は高分化の腺癌であり,なぜリンパ節ごとに分化度の異なる転移がみられたのか,について議論していただきたい.