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P-15 腹腔内へ自然破裂をきたした混合型膵管内乳頭状粘液性腺癌の1例

原井 正太1)、肱岡 範1)、大場 彬博1)、近藤 俊輔1)、森実 千種1)、高本 健史2)、奈良 聡2)、江崎 稔2)、島田 和明2)、平岡 伸介3)、奥坂 拓志1)
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科1)、同 肝胆膵外科2)、同 病理診断科3)


症例は70 歳代,男性.糖尿病で近医通院中,血液検査でCEA 80.5ng/mL,CA19-9 80.6U/mL と高値を認め,精査加療目的で当院紹介となる.腹部症状や炎症所見は認めなかった. 造影CT 検査では膵体部から尾部にかけて主膵管および分枝膵管の拡張を認め、明らかな壁在結節は認めなかった。さらに膵尾部から、膵外へ拡がる90mm 大の被包化される液体貯留を認め、網嚢腔まで及んでいた。 EUS では腹腔内の液体貯留は被包化され、膵尾側で主膵管との連続性を認めた. 以上より混合型IPMN の腹腔内破裂と診断した。腹腔内破裂による粘液漏出は被包化され、連続する網嚢内に限局化していたことから切除適応と判断し、膵体尾部切除を施行した. 開腹時,ゼリー状の粘液塊が骨盤内に少量,網嚢内で多量に認められた.病理所見では混合型IPMN に、low grade からIPMC minimally invasive までの所見を認めたが,破裂部と思われる箇所には病理学的にIPMC はなかった.網嚢内,腹腔内の粘液中に腫瘍細胞は少なく,悪性所見を認めなかったことから、高粘度の粘液による圧排性破裂と考えられた. IPMN が腹腔内破裂をきたすことは稀であり,本例は無症候性でスクリーニングのCT 検査で偶発的に診断に至った.本例は主膵管からの破裂を考えているが,破裂した要因や限局化した原因についてご討議いただきたい.