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P-16 術前に縮小したMCCの1例

東 俊二郎1)、栗田 亮1)、森 義治1)、松崎 直美2)、内田 洋一朗3)、寺嶋 宏明3)、八隅 秀二郎1)
公益財団法人田附興風会医学研究所 北野病院 消化器センター 消化器内科1)、同 病理診断科2)、同 消化器外科3)


症例は50 才女性。発熱・左季肋部痛を主訴に紹介受診となった。造影CT で膵尾部に78mm 大の比較的厚い被膜を有する嚢胞性病変を認め、造影効果を有する16mm の壁在結節を伴っていた。MRI では嚢胞はT1WI でlow, T2WI1 とheavy T2 でhigh intensity であり、壁在結節は拡散制限を認めた。EUS では厚い被膜を有する嚢胞性病変に壁内嚢胞を疑う所見を認め、壁在結節にはソナゾイドの流入がみられた。以上の画像所見から粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)と診断し、嚢胞周囲に脂肪織濃度上昇があったことと血液検査から嚢胞感染と診断し、抗菌薬加療を行った。術前検査として撮った第30 病日のCT で膵嚢胞は45mm と著明に縮小していたが、予定通り膵体尾部切除術を施行した。病理組織学的検査では嚢胞は線維性結合組織からなる厚い被膜を有し、内部は壊死物質や出血で充満していた。嚢胞を裏打ちする上皮には上皮内癌相当の高度異型上皮を認め、一部嚢胞壁内に浸潤を認めた。また、嚢胞近傍の主膵管上皮にもPanIN3 相当の異型上皮がみられた。嚢胞内には術後標本造影時に注入した色素が混入していたことから、主膵管と嚢胞に交通が存在し、主膵管への水平進展を伴ったと推測された。以上より粘液性嚢胞腺癌 (MCC) invasive と最終診断した。MCC の縮小例の報告はほとんどなく、本例で嚢胞が縮小した原因についてご検討いただきたい。