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P-21 詳細な画像評価およびEUS-FNAによる病理学的評価が診断に有用であった膵頭部腫瘤性病変の1例

織田 典明、小村 卓也、加賀谷 尚史
国立病院機構金沢医療センター 消化器内科


症例は63 歳、男性。腹痛精査のため施行したCT にて膵頭部腫瘤性病変が疑われ精査の方針とした。Dynamic CT にて、膵頭部から突出する最大径48mm 大の多房性嚢胞性病変を認めた。嚢胞内部に結節は認めず、嚢胞壁が一部濃染し、尾側膵萎縮は認めなかった。単純MRI では、T2:各嚢胞で信号強度が異なるまだら状高信号、MRCP:嚢胞描出(-)、主膵管との連続(-)、DW:高信号、ADCmap:低信号を示した。EUS では、境界明瞭な被膜様構造に囲まれた圧排性発育を呈するやや高エコーで均一な充実性病変と判断した。以上より、1. 造影効果が極めて乏しい充実性病変( 粘液癌) とともに、2. 粘稠な貯留物を含有した嚢胞性病変を疑った。画像のみでは確定診断に至らず、経下行脚的にEUS-FNA を施行した。採取された検体は、肉眼的に黄白色調の脆弱な小断片であり、病理学的には壊死組織であったため、充実性病変ではなく壊死物質が貯留した嚢胞性病変と判断したが確定診断は困難であった。画像所見を再検討し、鑑別には粘稠な貯留物の性状が決め手になると考え、採取された壊死物質を詳細に検討したところ、ケラチン、無核化した扁平上皮の集塊が混在し、膵リンパ上皮性嚢胞と最終診断した。手術などの治療は施行せず、画像検査による経過観察中である。本症例のように、画像による腫瘤の性状評価とともに、FNA 検体での病理学的な性状評価が診断の決め手となる症例について議論したい。