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P-28 術前診断に苦慮したIgG4関連硬化性胆管炎の一例

野田 まりん1)、南 一洋1)、福原 誠一郎2)、岩崎 栄典1)、阿部 雄太3)、久保田 直人4)、尾島 英知4)、金井 隆典1)
慶応大学医学部 消化器内科1)、慶應義塾大学医学部 内視鏡センター2)、慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科3)、慶応義塾大学医学部 病理学教室4)


症例は83 歳男性。直腸癌術後でフォロー中、2 年後の造影CT にて胆嚢管から総胆管の造影効果を伴う壁肥厚を指摘された。MRI でも同所見であり、EUS・ERCP では前区域枝〜膵内胆管までの広い領域で全周性に2mm 程度の壁肥厚を認めたが、胆石や腫瘍性病変は認めなかった。胆汁細胞診・胆管生検では悪性所見が得られず、慢性的な炎症性変化の可能性も考え経過観察の方針となった。3ヵ月後のCT では肝門部胆管に結節状の壁肥厚が出現し、再度ERCP による精査を行ったところ、総胆管は比較的均一な壁肥厚像であったが肝門部胆管はびまん性に不整形の肥厚を呈していた。胆道鏡での追加精査を行ったところ、前区域枝〜上部胆管内に乳頭状の隆起を認め腫瘍性変化が示唆された。再度の生検および細胞診でも悪性所見は得られなかったが、画像所見から胆管癌と診断し外科的切除術を施行した。病理学的所見では、胆管周囲に高度の炎症細胞浸潤とリンパ濾胞の形成、炎症領域には形質細胞および多数のIgG4 陽性細胞を認めた。炎症は特に肝外胆管周囲を主座とし、B5/8 合流部まで伸展していた。花筵状線維化や閉塞性静脈炎は明らかでなかったが、原発性硬化性胆管炎は否定的で又悪性所見も無いことから、組織学的にはIgG4 関連硬化性胆管炎に矛盾しないと考えた。本症例は、IgG4 値は正常で胆管外病変も伴わなかったことから、悪性疾患を否定できず診断に苦慮した。病理像、画像所見についてご検討をお願いしたい。