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P-31 胆嚢陥凹性病変の1例

工藤 彰治、比佐 岳史、山田 崇裕、大瀬良 省三、桃井 環、篠原 知明、友利 彰寿、福島 秀樹、古武 昌幸
佐久総合病院佐久医療センター 消化器内科


患者は40 歳代男性。健康診断で肝胆道系酵素の軽度上昇を指摘され、近医を受診した。US で胆嚢内高エコー腫瘤を認め、当科紹介となった。US では胆嚢壁内側低エコー層のびまん性肥厚を認め、胆泥と小結石を伴っていた。EUS ではびまん性壁肥厚に加え、底部腹腔側に幅20 mm、厚み7mm の表面が陥凹した低エコー壁肥厚像を認め、外側高エコー層が不明瞭化していた。ドプラでは同部に血流シグナルを認めた。一方、頸部壁内に多数の無エコー域を認め腺筋腫症と診断した。胆嚢管と胆嚢内には多数の小結石と胆泥を認めた。造影CT では胆嚢壁全体が不均一な肥厚像を呈し、底部壁に陥凹を伴っていた。隣接臓器への浸潤像を認めなかった。陥凹部壁はMRI T1 強調画像で低信号、T2 強調画像で等信号を呈し、拡散能低下はみられなかった。内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージチューブ留置下の胆汁細胞診はClass I 〜 III であった。胆嚢癌を否定できず、診断的腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。肉眼的には胆嚢底部に15mm の表面無構造の不整形陥凹を認め、同部割面は境界不明瞭な白色組織であった。組織学的には上皮が脱落し、表層から炎症性滲出物、肉芽組織、線維化を認めた。消化管における消化性潰瘍と類似した組織像であり、胆嚢潰瘍と最終診断した。胆嚢潰瘍はまれな疾患で、出血や胆道閉塞など緊急の病態を併発するため潰瘍自体の詳細な画像検討の報告がない。本例のような陥凹性壁肥厚は潰瘍を示唆する所見と考えた。