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P-32 診断に苦慮した肝内・胆嚢内病変の一例

宮本 和也1)、松本 和幸1)、加藤 博也1)、杭瀬 崇2)、吉田 龍一2)、楳田 祐三2)、八木 孝仁2)、西田 賢司3)、田中 健大3)、岡田 裕之1)
岡山大学病院 消化器内科1)、岡山大学病院 肝胆膵外科2)、岡山大学病院 第2病理学3)


症例は70 歳代男性。体重減少、食後の右季肋部痛を主訴に近医受診し、精査目的に紹介となる。腹部エコーでは肝S4/5 領域に約8cm 大の多房性嚢胞性病変を認め、内部にはエコーソースを伴う貯留物が充満し、不整な充実成分を認めた。造影CT では病変は胆嚢内および肝内へ連続しており、特に肝床側と病変の足側で壁不整および充実部分が目立ち、肝、結腸へ浸潤を疑う所見であった。MRI の拡散強調像では、嚢胞辺縁の壁に沿うように拡散信号の低下を認める箇所があり、PET-CT でも同箇所にFDG 高集積を認めた。EUS では嚢胞内に粘液を疑う貯留物を認め、嚢胞辺縁に低乳頭状の充実部を認めた。ERCP では胆嚢管は閉塞しており、胆管内に粘液の存在は認めなかった。胆汁細胞診はclass Ⅱであった。画像所見から胆嚢原発であればICPN や胆嚢癌、肝原発であればMCN を疑い、拡大右葉切除術+肝外胆管切除術を選択し、浸潤が疑われた消化管の合併切除も施行した。病理所見は、胆嚢壁内を中心に角化傾向を示す異型細胞の増殖を認め、大部分は中〜低分化扁平上皮癌で、一部に腺癌成分を認め、胆嚢腺扁平上皮癌と診断した。画像上の嚢胞性変化は内部壊死であり、膨張性に急速に発育し、内部壊死に至ったものと推測した。胆嚢腺扁平上皮癌は原発巣と比較して大きな浸潤巣を形成し、内部壊死を伴うことで嚢胞様変化を呈することがある。本症例は術前診断に苦慮しており画像所見による鑑別疾患につき御検討いただきたい。