室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。


P-33 術前診断に難渋した胆嚢腫瘤の1例

早川 宏、進藤 浩子、深澤 光晴、高野 伸一、高橋 英、廣瀬 純穂、川上 智、深澤 佳満、原井 正太、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学医学部 第1内科


症例は78 歳男性。右季肋部痛を主訴に近医を受診し、腹部超音波検査で胆嚢底部に腫瘤を指摘された。腹痛の増悪と発熱を認め、急性胆嚢炎を併発した胆嚢腫瘤の精査のため転院となった。血液検査では胆道系酵素、炎症反応の上昇を認め、腫瘍マーカーはCEA 53.3ng/ml、CA19-9 278.4U/ml と高値であった。造影CT では胆嚢底部を充満する腫瘤を認め、腫瘤内に造影効果は認めず漿膜側の壁のみ造影された。MRI では胆嚢底部から体部を充満する腫瘤を認め、拡散強調像で著明な高信号、T2 強調で腫瘤内に不均一な高信号を認めた。胆嚢管に結石を認めた。腹部超音波では底部から体部に不均一な低エコー腫瘤が充満し、内部に無エコー領域も散在していた。Sonazoid 造影では腫瘤のほとんどは造影されず、腫瘤辺縁でわずかに血管が造影されるのみであった。肝との境界は明瞭であった。画像所見から胆嚢癌(粘液癌)、黄色肉芽腫性胆嚢炎を鑑別に挙げ、拡大胆嚢摘出術+肝外胆管切除術+リンパ節郭清を行った。病理所見では腫瘤内部は大部分が壊死組織であり、辺縁に充実性増殖を示す低分化な腺癌組織を認めた。最終診断は低分化型腺癌(por1), 90 × 70mm, pT2,pN0, pCM0, pEM0, pPV0, pA0, pStage Ⅱであった。術前の画像所見から広範な壊死を伴う胆嚢癌と診断可能か検討したい。