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P-34 急性胆嚢炎を契機に診断に至った進行胆嚢癌の1例

渋谷 和人1)、吉岡 伊作1)、馬場 逸人1)、平野 勝久1)、渡辺 徹1)、安藤 孝将2)、安田 一朗2)、藤井 努1)
富山大学大学院 医学薬学研究部 消化器・腫瘍・総合外科1)、富山大学大学院 医学薬学研究部 内科学第三講座2)


胆嚢癌は予後不良の疾患であり、進行していた場合根治切除は侵襲の大きなものになることが多い。一方で、良性胆嚢疾患との鑑別が困難であり、過度な手術侵襲を避ける観点から、診断および術式決定に悩むことがまれにある。今回我々は急性胆嚢炎で発症し、胆嚢癌の診断に苦慮した1 例を経験した。症例は67 歳男性。胃全摘・脾摘の既往あり。腹痛を主訴に近医を受診し、腹部CT にて胆嚢壁肥厚を指摘され精査加療目的に当院へ紹介となった。その初診時の血液検査にて高度の炎症反応があり、腹部造影CT 検査では、胆嚢頚部に淡い高濃度を示す結石を示唆する所見と胆嚢壁全体が浮腫性に肥厚しているのを認め、急性胆嚢炎と診断した。一方で、胆嚢頚部には壁肥厚が他よりも強く腫瘍性病変を疑うような所見があった。腫瘍マーカーは、CEA 20.2 ng/ml、CA19-9 339 U/ml といずれも高値だった。最大で右肝切除が必要となる胆嚢癌が併存する可能性も考え、まずは保存的加療を行い炎症改善の後に精査を行う方針とし、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を行った。FDG-PET では胆嚢壁に集積増加を認めた。PTGBD を介して胆道鏡を挿入し胆嚢壁から生検したところ、腺癌の診断を得た。以上より術前診断T3aN0M0 stageIIIA の胆嚢癌と診断し、残肝容量不足から経皮経肝右門脈塞栓術の後に、右肝切除、肝外胆管切除、領域リンパ節郭清を施行した。病理結果から最終診断は、胆嚢癌pT2pN0M0 p-stageII であった。